神奈川県の静かな一角にひっそりと佇む「相模原レトロ自販機公園(自販機博覧会)」は、日本でも最もユニークで愛されているレトロスポットのひとつです。何の変哲もない砂利の駐車場に並ぶのは、1970〜80年代の懐かしさ満点のレトロ自販機たち。ここは、食のノスタルジーと機械愛が融合したタイムカプセルのような場所です。
東京の駅などで見かけるスタイリッシュな現代の自販機とは異なり、相模原の自販機たちはどこか愛おしいほどアナログ。ボタンを押すとカタカタと音を立て、最後には「ガシャン」と心地よい音と共に商品が出てくる、そんな機械のメカニカルな動きが健在です。
この場所の魅力は、なんといっても食べ物。どこに行けば、駐車場の片隅で金属の箱からアツアツのハンバーガーが出てくる体験ができるでしょう?人気のハンバーガー自販機は、約30秒で包み紙付きのバーガーを温めて提供。昭和の香りが漂う紙ナプキン付きで、まるでタイムスリップしたような気分にさせてくれます。他にも、ハムチーズやあんこ入りのホットトーストサンド、カップ麺にお湯を注いでくれる機能付きのラーメン自販機、缶入りおでん、カレーライス、懐かしのフルーツソーダやコーヒー牛乳の自販機などがずらり。
これらの自販機は、長年にわたり丁寧にメンテナンス・補充されており、単なる機械ではなく昭和文化の一部として大切に扱われています。色あせた看板や懐かしいイラストが施された筐体は、まるで昭和の風景そのもの。小銭がない人のために、両替機まで用意されているのも嬉しいポイントです。キャッシュレス時代に逆行して、ここはまさに「現金オンリー」の聖地。
地元の好奇心から始まったこの場所は、今ではレトロマニア、YouTuber、旅行者たちの“聖地巡礼”スポットとなりつつあります。星空の下、ガタガタと音を立てながら出てくるホットサンドを味わう瞬間は、何とも言えない幸福感があります。ベンチやイートインスペースはありませんが、多くの来訪者は車に寄りかかったり、縁石に腰掛けたりしながら“屋外グルメ”を楽しんでいます。それもこの場所の醍醐味です。
公園は24時間営業しており、深夜の小腹満たしにも、神奈川日帰り旅の途中の立ち寄りスポットとしてもおすすめ。最寄りの相模原駅からもアクセス可能で、目立つ看板こそありませんが、夜になるとレトロ自販機の明かりがぽつぽつと光り、その存在を静かに主張しています。
ハイテクとデジタルが主流のこの時代に、相模原レトロ自販機公園は、素朴で温かみのある時代を思い出させてくれる場所です。食べ物目当てでも、写真映え狙いでも、純粋なノスタルジーでも、ここでの体験はどれも“予想外の喜び”に満ちています。